聴覚の時間情報処理：心理物理学・神経生理学・深層学習によるアプローチ

• Item type: SIG Technical Reports(1)
• 公開日: 2024-06-07
• タイトル: 聴覚の時間情報処理：心理物理学・神経生理学・深層学習によるアプローチ
• 言語: jpn
• キーワード / 主題Scheme: Other
• キーワード / 主題: 招待講演2
• 資源タイプ / 資源タイプ識別子: http://purl.org/coar/resource_type/c_18gh
• 資源タイプ: technical report
• 著者所属: 静岡社会健康医学大学院大学／NTTコミュニケーション科学基礎研究所／静岡県立総合病院
• 著者所属: NTTコミュニケーション科学基礎研究所
• 著者名: 古川, 茂人; 上村, 卓也
• 論文抄録 / 内容記述タイプ: Other
• 論文抄録 / 内容記述: 我々の高次の聴覚知覚・認知は，内耳における入力音の周波数分析・神経信号変換（低次処理）のみならず，いわば “中次” の特徴抽出・特徴分析の神経情報処理に支えられている．自然音（語音，音楽，環境音など）の知覚を構成する基本的な音響特徴に，振幅包絡（振幅変調）がある．時間的な変調パターンは，語音・音楽等におけるピッチやリズムを規定するばかりではない．例えば周波数スペクトルや時間微細構造が大きく劣化した語音であっても，変調情報がある程度保存されていれば十分な了解度が得られる．これは人工内耳が聴覚補償技術として機能する裏付けとなっている．また，環境音（小川のせせらぎ，雑踏のざわめき，雨音など）の知覚は，変調の脳内表現のモデル（後述）によってよく説明できる．振幅包絡を時間的な波（変調波）とみなせば，一般的な音波形の分析と同様な発想で，その聴覚情報処理機構にアプローチすることができるだろう．例えば変調検出閾値（変調の存在を検知できる最小の変調度）を心理物理学的に計測し，変調周波数の関数としてプロットすると（時間変調伝達関数），一般に低域通過フィルタのような形状を示す．これは聴覚系の時間分解能を反映する一種の指標とみなせる．さらに，変調波の分析機構としては，仮想的な変調フィルタ群（特定の変調周波数に同調する帯域通過フィルタの群）が心理物理学的モデルとして広く受け入れられている．内耳において特定の周波数に同調した聴神経群（聴覚フィルタ群）によって，音波形のスペクトルが分析されることと同様である．実際に神経生理学的な計測により，聴覚中枢神経は特定の変調周波数に選択的に反応することが示されている．では，聴覚系は「なぜ」そのような特性を備えるようになったのだろうか？ 講演者らの近年の研究により，自然音（語音，環境音）の分類に訓練された（≒最適化された）深層ニューラルネットワーク（DNN）の素子（「ニューロン」）に，変調周波数への選択性が発現し，振幅変調に対する反応特性がヒトや生物の神経生理学的・心理物理学的反応特性と類似性すること，タスク成績が良好な DNN ほどその類似性が高いこと，などが示された．これは，ヒトや生物の変調への反応特性が，進化・発達の過程で音情報処理に最適化する過程で生じたことを示唆する知見である．本講演では，講演者らの研究を織り交ぜながら，これらのトピックに関する基本的な知見や手法を解説する．
• 書誌レコードID / 収録物識別子タイプ: NCID
• 書誌レコードID / 収録物識別子: AN10438388
• 書誌情報: 研究報告音楽情報科学（MUS）; 巻 2024-MUS-140, 号 3, p. 1-1, 発行日 2024-06-07
• ISSN / 収録物識別子タイプ: ISSN
• ISSN / 収録物識別子: 2188-8752
• Notice: SIG Technical Reports are nonrefereed and hence may later appear in any journals, conferences, symposia, etc.
• 出版者 / 言語: ja
• 出版者: 情報処理学会